目次
Toggle当事者研究講座のご報告
9月19日、ソーシャルスクエア西宮店にて、当事者研究出張講座を行いました。ソーシャルスクエア西宮は「自立訓練」と「就労移行支援」という二つのサービスを提供されている障害福祉事業所です。地域とつながる活動やオシャレな雰囲気が印象的な事業所さんです。
今回はそんなソーシャルスクエアさんのプログラムとして行った当事者研究の内容をご紹介します。
当事者研究講座レポート
今回の講座には、12人の方にご参加いただきました。
午前中からのプログラムにも関わらず、たくさんご参加くださりとても嬉しかったです。
講座概要
- 日 時:2024年9月19日(木)10:00 – 11:30
- 場 所:ソーシャルスクエア西宮店
- 人 数:12人
- 内 容:障害福祉サービスのプログラムとしての「当事者研究」グループワーク
- 目 的:苦労や困りごとを題材にした対話を通じて、共有や発見の体験をしてもらう
講座内容
本講座では、通常の講座より当事者研究の紹介にあたる座学部分は短くまとめ、2つのグループに分かれて、合計で4つのテーマの当事者研究を行いました。
グループワークの流れ
ワークは以下の流れで進めます。
- 苦労の共有
- 研究テーマ選択
- テーマ毎の研究
テーマ選び
グループ内でまず「みんなの苦労」を共有し、その中から当事者研究を行うテーマを選びます。
- 「みんなに聞いてほしい」「一緒に考えてほしい」という当事者の希望
- 「興味がある」「詳しく聞いてみたい」という他の参加者の関心
- 「自分も同じような苦労がある」という共感
このような要素が大切にされながら、グループ全体で研究テーマを決定しました。
テーマ毎の当事者研究のグループワーク
テーマ毎の当事者研究のグループワーク
ワークは、テーマ毎に以下の流れで進行します。
- 当事者さんにみんなでインタビューし苦労について詳しくお聞きします。
- インタビュアーから当事者さんに「発見」「共感」「対処方法のアイディア」を共有します。
- 当事者さんからインタビュアーに「発見」や「感想」を共有します。
ここからは各研究テーマについての概要をお伝えいたします。
※各テーマの「概要」はファシリテーター視点からのまとめの一つ」であり、参加者それぞれの体験を総括するものではありません。
研究テーマ1:「やりたい仕事のジャンルが決められない」&「将来が見えない」
概要
今回の研究は「やりたい仕事のジャンルが決められない」という当事者さんと「将来が見えない」という当事者さんが、お二人ともに就職に関するお悩みであることや、お悩みのスタンスが似ているということで、2つのテーマをまとめての研究となりました。今回の参加者さんは「就労移行支援」の利用者さんたちもいるため、就職に関するお悩みは、参加者さん全員にとって共通のお悩みとも言えるようでした。
インタビューは当事者さんお二人ともに行い、難しさを感じている点やこれまでの経緯などを具体的にお話していただきました。
アイデア共有の時間には、就職経験のある方からの実体験からくる具体的で細やかなアドバイスが多く出されました。経験者でなければわからない肌感覚や感想から、当事者さんたちは新たな視点を得た様子で、「一人でぐるぐる考えていた」ループから抜け出す感覚があったように思います。
また、「やりたいことがあるのは凄い」「共感できる」という意見や、当事者さんのこれまでの立ち直りに「好きなこと」が大きな役割を果たしていた、という発見もあり、ポジティブな要素が多く共有されました。
当事者さんたちは「これからも周りの人の意見を聞きたい」と語ってくださいました。
研究テーマ2:「緊張しすぎると泣いてしまう」&「気分が落ち込むことがある」
概要
こちらも「緊張しすぎると泣いてしまう」と「気分が落ち込むことがある」という、お二人の「困りごと」をまとめて扱う形でした。
インタビューはお二人ともに行いましたが「気分の落ち込み」はうつ病が関わっているため難しい部分がある、という当事者さんご本人の申し出により、アイデア出しは主に「緊張しすぎると泣いてしまう」にフォーカスする、という流れで進みました。
みんなからのアイデアを出す中で、当事者さんが「それはすでに実践している」というものも多くありました。当事者さんが自分の特性をよく理解しており、すでにたくさんの努力、実践を重ねておられることがわかりました。
そのことはグループワークの時間内にも表れました。
「1分間スピーチの練習をする」というアイデアを、当事者さんはその場で実践されたのです。そして、みんなからはその実践に対するフィードバックも寄せられました。当事者研究は、一回のグループワークでは終わらずに、前回のアイデアを生活の中で実践し、次のグループワークで「実践の振り返り」の時間をもつ…… という手法もよくとられますが、今回の当事者さんは、一回のグループワークの中で「実践と振り返り」までも行ってしまわれたわけです。
参加者さんたちのオープンで積極的な姿勢により、爽快なスピード感で進んだ研究でした。
研究テーマ3:昼にめっちゃ寝てしまう
概要
昼間によく寝てしまうという困りごとの研究を行いました。このテーマが選ばれた理由は、夜眠れないという苦労を持つ方が他にもおり、昼寝をする当事者さんが夜も眠れるかなどの疑問や関心が集まったためです。
インタビューでは、当事者さんの具体的な状況について以下のことがわかりました。
- 事業所から帰宅後の夕方4時から6時頃までよく寝てしまう。
- 事業所の昼休みに寝てしまい、午後のプログラムに参加できないことがある。
- 夜はしっかり眠れており、就寝前のルーティーンが確立されている。
昼間に寝ない人たちには以下のような習慣があることも共有されました。
- 図書館で過ごす
- 夕飯の準備をする
- 家事をする
昼寝の時間を他のやりたいことに充てたいという当事者さんの希望に対して「日中、緑の中を歩くなどの運動をする」「昼寝時にアラームをセットする」などのアイディアが出され、当事者さんは、アラームの重要性に気づいたと感想を述べられました。
また、昼寝が得意ではない方から、昼寝によって自分の時間が減ってしまうという困りごとを知ったという気づきも共有されました。
睡眠に関する悩みは多くの人が抱えていること、色々な形で深刻な困りごとになっていることを再確認する機会となり、睡眠をテーマにした当事者研究グループがあると良いかなとも感じました。
研究テーマ4:ご飯を作って食べるのが面倒
概要
ご飯を作って食べることが面倒という苦労を持つ当事者さんは、食べることにあまり興味がなく、作ることも食べることも自分だけだったらサボりたいと感じているそうです。しかし、ご家族の分も作る役割を担っておられるため、適当にすることもできない状況だと教えてくれました。
普段作るメニューをお聞きすると、だし巻き卵やエリンギのチリソース炒め、鍋など、決して適当にしているわけではないことがわかります。適当にできないからこそ苦労となっていることや、たくさんの試行錯誤をされていることから、長年悩まれているテーマであることがとても伝わってくるインタビューでした。
インタビューでは以下の内容もシェアされました。
- 調子の波がある。
- 不調時に食事の準備をするのはとても大変である。
- 調子の良い時にまとめて作り置きをするなど工夫している。
- 惣菜や冷凍野菜を便利に利用することもある。
- 昔は料理が好きで、進んで手伝いもしていた。
- いつの間にか義務感とともに面倒な気持ちが強くなっていった。
インタビューの後は「思考を変えてみる」「事業所のプログラムで月に一度みんなで料理をする機会に参加してみる」「一流の料理人になりきって気分を変えてみる」などの提案がされました。
また「なるべく楽をしたいという気持ちはよく分かる」「食事の用意は本当に大変だと思う」という当事者さんへの共感の声も共有されました。
当事者さんは「事業所のプログラムに参加すること」「料理人になりきる」というアイディアを試してみたいとおっしゃられていました。
当事者さん自身が試行錯誤をしてきた困りごとに対して、当事者さんにとって新たな手段として、具体的なアイディアが提案されたこの研究は「みんなで共に」という当事者研究の効果を改めて知る機会になりました。
参加者さんの感想
参加者さんの感想
講座に参加いただいた皆さんから、たくさんの嬉しい感想をいただきました。
感想
- 残り時間が分かるようになっていたら良かったと思う
- 次回があるなら同じような悩みを持つ人(就労系は就労系)(生活系は生活系など)でチームにまとめてワークをしたいです。(事前に苦労や悩みを聞いておくとかして。)
- 良かった点は、皆さんのお悩みが知れたり、色んな意見が聞けて、視野が広がったことです。
- 話し合う時間があって良かったです
※グループワークの良かった点や改善してほしい点をお聞きした回答です。
参加の理由
- 自己分析系統に興味があるから
- セルフケアが苦手だから。
- ソーシャルスクエアのプログラムにあったことが理由ですが、「まちがく」に1度もこのテーマで参加出来ていなく、興味を持っていたからです。
- 出たことなかったから気になった
アンケートの結果
当事者研究出張講座を承ります
- 当事者研究講座のレポートを読んできただきありがとうございました。
NPO法人あるでは、当事者研究の講座を受講したい方のために出張講座を行なっています。
例えばこんな場面でも、
- 当事者活動の場で受講したい
- 職員研修として受講したい
- 障害福祉サービス利用者様向けのプログラムに使いたい