当事者研究出張講座レポート:大手前大学

当事者研究講義資料

当事者研究講座レポート

講座概要

  • 日 時:2024年11月20日(水)10:50 – 12:20
  • 場 所:大手前大学さくら夙川キャンパス
  • 人 数:7
  • 内 容質的調査法の授業
  • 目 的:当事者研究を体験してもらう

講座内容

本講座では、当事者研究の体験に焦点を絞り、グループワーク部分のみの実施とし、2つのテーマで当事者研究を行いました。

グループワークの流れ

ワークは以下の流れで進めます。

  1. 参加者みんなの苦労の共有
  2. 当事者さんへのインタビュー
  3. 当事者さんへの提案 
当事者研究グループワークの流れ

STEP1共有

まずはじめに「みんなの苦労」を共有し、その中から当事者研究のテーマを選びます。

授業ということもあり、意見が出しにくいかなと思いましたが、学生さんたちはとてもオープンマインドでいろいろな苦労を共有してくれました。

  • 「みんなに聞いてほしい」「一緒に考えてほしい」という当事者の希望
  • 「興味がある」「詳しく聞いてみたい」という他の参加者の関心
  • 「自分も同じような苦労がある」という共感

いつものように、このような要素を大切にしながら以下の2つに研究テーマを決定しました。

大手前大学で行った当事者研究講座で参加者が挙げた苦労の一覧

STEP2:インタビュー

STEP1でテーマを決めたら、テーマ毎に以下の流れでワークを進行します。

 

STEP2インタビュー:

当事者さんにみんなでインタビューし苦労について詳しくお聞きします。

 STEP2の目的は、STEP3の材料となる情報を当事者さんから共有してもらうことです。

そのために、下記のルールを設けて、当事者さんが話しやすい場作りを心がけています。

  • 当事者さんは答えにくいことは言わなくて良い。
  • インタビュアーは質問のみを行い意見を言わない。

STEP3:提案

インタビュアーから当事者さんに「発見」「共感」「対処方法のアイディア」を提案します。

ここではインタビュアーの話しやすさを大切にすることを心がけます。

そのために、提案や意見について、当事者さんはまずは聞くことを優先していただきます。

 

研究のまとめ

以上のSTEPを終えた後に、研究のまとめとして、

当事者さんからインタビュアーに「発見」や「感想」を共有していただきます。

私たちがおこなう当事者研究では、このように伝えることと受け止めることを順番に行うようにしています。

テーマ毎の当事者研究レポート

ここからは各研究テーマについての概要をお伝えいたします。

※各テーマの「概要」は当法人スタッフの視点によるまとめであり、参加者それぞれの体験を総括するものではありません。

研究テーマ1:「彼女ができない」&「出会いがない」

当事者研究:テーマ「彼女ができない」ワークの板書
当事者研究:テーマ「彼女ができない」インタビュー内容
当事者研究:テーマ「彼女ができない」ワークでのアイディア
彼女ができないという苦労に提案されたアイディア

概要

「彼女ができない、出会いがない」というテーマでとても盛り上がったこちらの研究。
まずは、現状やこれまでの事柄の情報をみんなで質問していきます。
質問を重ねる中で、出会いがないという困り事は「お付き合いしたいと感じる方との出会いがない」と具体化されていきます。また「彼女ができない」という悩みも「友達に彼女ができると焦る」という気持ちになるのがしんどいのだという気づきに変わりました。

 

当事者研究では苦労のテーマが対話の中で変わることがしばしば起こります。

そして、それは歓迎される対話の効果です。

 

「お付き合いしたいと感じる方との出会いがない」「友達に彼女ができると焦る」

と変化した苦労の解決に向けて、マッチングアプリを使うなど、パートナーを作るや出会いを増やすなどの提案がされました。

 

そのような直接的な手段の提案がでる中で、ファリシテーターから「友達に彼女ができると焦る」なら「友達と彼女が別れればいいんじゃない?」という問いを投げたことをきっかけに「好みの幅を広げる」や「友達の彼女の邪魔をする」など視点の切り替えで現状の見え方を変えてみる提案も多くでました。

 

暗黙の了解で、思考の枠組みが場で共有されていることや、枠組みを広げたり視点を変えることで、手段は色々と生まれるのだなということを体験していただけたように思います。

 

当事者さんからは、行動回数が少ないことに気づけた。いろいろな意見を聞けて面白かったしタメになった。という感想が述べられました。

研究テーマ2:「課題をやる時間がない」

当事者研究:テーマ「課題をやる時間がない」ワークの板書
当事者研究:テーマ「課題をやる時間がない」インタビュー内容
当事者研究:テーマ「課題をやる時間がない」という苦労に提案されたアイディア
「課題をやる時間がない」という苦労に提案されたアイディア

概要

「課題をやる時間がない」という学生さんならではの研究テーマ。

 

具体的に話を聞いてみると「本当に時間がないなあ」とみんなが納得するほど、当事者さんが多くの事に取り組まれていることがわかりました。

インタビューで語られた当事者さんの毎日の予定は本当に盛りだくさんでした。

 

みんなからは、課題をやるために、何かを減らすという方向の提案がされると「減らしたくないな」「大事なんだよな」と当事者さん。

 

それならばと「彼女を作って手伝ってもらう」という1つ目のテーマを引き継ぐ案や「AIを使って手伝ってもらう」などリソースを増やす方向の意見も沢山でました。

 

1つ目の研究で、実践した視点を変えることが、すぐにアクションとして実行されたことが印象的でした。

 

 

当事者さんは研究の振り返りとして、他の人も同じだと思っていたけど、そうではないことを知った。そして、こうして改めて予定を書き出してみるとたしかにたくさんあるなと気づいた。という感想を述べてくれました。

参加者さんの感想

授業に参加いただいた学生さんの感想をご紹介します。

感想

  • グループでやることで自分以外の考えなどが聞けてとても楽しかったので、またやれる機会があればやりたいなと思います。
  • 人の悩みなどを聞いて自分が共感出来ることがあったり、できないことがあったので面白かった。
  • 他人の悩みを聞く機会はあまりないので色々聞けて面白かった。
  • やってみて自分自身とは違う角度から切り込んでいる意見や根本を解決するにはどうしたら良いのかというような解決法の提案があり、とても面白かったし勉強になったなと思いました。
  • 話したことない人達と話せた。
  • 気軽に発言できた。
  • 授業で顔は知っていたけど、あまり話したことがないメンバーのことを知ることができてよかったし楽しかった。

アンケートの結果

当事者研究の満足度調査結果

※グループワークの良かった点や改善してほしい点、参加した感想をお聞きした回答です。

当事者研究ワーク中の居心地の良さ調査結果
当事者研究グループワークの時間の長さ調査結果
当事者研究への参加希望の調査結果

まとめ

今回は、大手前大学現代社会学部の授業の一環として行なった当事者研究についてご紹介しました。

学生さんたちとの当事者研究でとても印象的だったことがあります。

それは彼らが他者の意見に対して、とても柔軟だったことです。

ファシリテーターに対しても、授業を受けている学生さん同士でも、他者の意見を素直に受け止め対話する感性にとても感銘を受けました。

授業に参加してくれた学生さんたち、そして貴重な機会をくださった伊藤先生に心より感謝申し上げます。
※この当事者研究はJSPS科研費24K16524の助成を受けたものです。

当事者研究出張講座を承ります

当事者研究講座のレポートを読んできただきありがとうございました。

 

NPO法人あるでは、当事者研究の講座を受講したい方のために出張講座を行なっています。

例えばこんな場面でも、オンライン、対面どちらでも講座が可能です。

  • 当事者活動の場で受講したい
  • 職員研修として受講したい
  • 障害福祉サービス利用者様向けのプログラムに使いたい

ご希望があればお気軽にご相談ください。

上部へスクロール