目次
Toggle当事者研究講座を行いました
2024年7月3日(水)に西宮の新しい学びのカタチ「まちがく」にて、当事者研究をテーマとした講座「自分を研究してみる当事者研究」を行いましたので、当日の内容についてお伝えいたします。
西宮の新しい学びのカタチ「まちがく」
「まちがく」は、特定非営利活動法人なごみさんが主催する西宮の新しい学びのカタチです。「西宮のまちを『キャンパス』に、様々な世代が共にまなぶワクワクする学びの場(がっこう)」をコンセプトに実施されています。
NPO法人あるは、「まちがく」の2024年度協働スポンサーとして参加しており、日頃取り組んでいる「当事者研究」をテーマにした講座を実施させていただきました。
当事者研究講座レポート
「自分を研究する当事者研究」というタイトルで開催された講座は、11人の参加があり、満席となりました。
「当事者研究」の意味は知らないけど興味を持ってくれた方が多くおられました。
講座概要
- 講座名:「自分を研究してみる当事者研究」
- 日 時:2024年7月3日(水)19:00 – 20:30
- 場 所:まちがくキャンパス:HAMACO:LIVING
- 人 数:11人
- 内 容:
本講座では「苦労を題材にして、自分を研究する」手法である「当事者研究」をご紹介させていただきました。初めての「当事者研究」体験として「共有と発見」を目標としグループワークを行いました。 - 目 的:当事者研究について、体験を通じて知ってもらうこと
講座内容
本講座では、「苦労を題材にして、自分を研究する」当事者研究について実際に体験していただくことを目的としてグループワークを中心とし、2つのグループに分かれ、4つのテーマで当事者研究を行いました。
グループワークの流れ
ワークは以下の流れで進めます。
- 苦労の共有
- 研究テーマ選択
- テーマ毎の研究
テーマ選び
グループ内でまず「みんなの苦労」を共有し、その中から当事者研究を行うテーマを選びます。
- 「みんなに聞いてほしい」「一緒に考えてほしい」という当事者の希望
- 「興味がある」「詳しく聞いてみたい」という他の参加者の関心
- 「自分も同じような苦労がある」という共感
このような要素が大切にされながら、グループ全体で研究テーマを決定しました。
テーマ毎の当事者研究のグループワーク
テーマ毎の当事者研究のグループワーク
ワークは、テーマ毎に以下の流れで進行します。
- 当事者さんにみんなでインタビューし苦労について詳しくお聞きします。
- インタビュアーから当事者さんに「発見」「共感」「対処方法のアイディア」を共有します。
- 当事者さんからインタビュアーに「発見」や「感想」を共有します。
ここからは各研究テーマについての概要をお伝えいたします。
※各テーマの「概要」はファシリテーター視点からのまとめの一つ」であり、参加者それぞれの体験を総括するものではありません。
研究テーマ1:役職をバトンタッチできない
概要
「長年務めている少年野球チームの代表の立場を次の世代に引き継ぎしたいのに担い手が決まらない。」という苦労を共有してくれた当事者さん。
何年も困っていると聞いたみんなが「この苦労にみんなで取り組もう」とこのテーマが選ばれました。長年続いている苦労だけあり、この場で「これだ!」という手段には至りませんでしたが、「やる人一人が決まらないならば何人かで担うことにする」「仕事を分業制にする」「子どもたちにも任せる」「みんながやりたくない仕事はやめる」「ポイント制でご褒美を出す」などたくさんの対処方法のアイディアが共有されました。
アイディアだけではなく、「長年関わり続けていることが本当にすごい」や「代表をお願いして何度も断られる経験はとてもせつないと思う」など尊敬や労いの気持ち、当事者さんの「子供達と離れるのはさみしい」という気持ち「これまでに一番嬉しかったことなどのエピソード」も共有され、気持ちの寄り添い合いが印象的な研究でした。
研究テーマ2:楽しそうなことにホイホイいってしまう
概要
楽しそう!ワクワクする!と感じる催しやお誘いの予定を詰め込みすぎてしまう。時には、体調を崩してしまうことがあるほど…という困りごと。
インタビューではワクワクでいっぱいのエピソードをたくさん共有いただき、みんなからは予定を調整するいろいろな基準(ものさし)のアイディアが共有されました。
たとえば「1日に入れていい予定の数を決める」や「ワクワクの度合いを数値化して小さいワクワクの優先度を下げる」などなど。
ものさし一つとってもみんなで考えるといろいろな案あったり、ワクワクが多いのは「いいこと」「羨ましい」「充実していそう」などポジティブに感じるという感じ方など、色々な「違い」を共有する機会にもなっていました。
研究を通じて、当事者さんは「選んでないんだ」ということや「相談してなかった」という発見があったこと、今日知った物差しを使って選ぶ実験をしてみたいという気持ちを共有してくれました。
研究テーマ3:自室の片付けができない
概要
「時間はあるのに、自室の片付けができない」という困りごとでした。
インタビューの中で、具体的にどのように散らかっているのか? ということを語ってもらいました。
・当事者さんはNPO関係の活動をしており、その関連の紙類が多い。
・書類について「この先、要るのか要らないのか」の判断が難しい。
そのことが、「片付けられない」ことの大きな要因になっている。
こうした事情を知って、みんなから「片付けるための具体的な方法」のアイディアが多く出されました。一方で、「NPO活動をしている当事者さんにとって、これは必然的な状況なのでは?」という疑問の投げかけもありました。
当事者さんは最終的に「書類を捨てたいわけではない。自分にとって理想的なのは、書類をきれいに収められる図書館のような部屋」「必要なものを必要なときに入手できるのであれば、全てをとっておく必要はないので捨てられる」と語りました。
これまで自覚していなかった「自分のニーズの発見」になった研究でした。
研究テーマ4:息子が独立してくれない
概要
24歳の息子さんがおられる当事者さん。当事者さんを含め、ご家族は息子さんに「実家を出て独立してほしい」と望んでいます。
しかし息子さんは就職活動が難航しており、独立できない状態です。
その中で、家族間の不和、金銭的な問題なども出てきているとのこと。
話を聞いたみんながまず口にしたことは、「インタビューの時間が足りない」ということでした。当事者さんが直面している問題の大きさや深さを、みんなが「自分ごと」のように受け止め、短い時間の中でも、細かく丁寧に質問していました。
みんなからは「息子さんはすでに精一杯の努力をしている」「息子さんには時間、人的サポートなどの支援が必要では」といった、息子さんに寄り添い応援する意見が多く出ました。
当事者さんは「普段は人に言えない話をできたことで気持ちが少し楽になった。
ここの人たちは息子の味方になってくれたのも嬉しい」という感想を語ってくれました。
この研究の時間は、世代も価値観も異なる初対面の人達が、一人のお悩みに真剣に取り組む姿勢が印象的でした。
参加者さんの感想
参加者さんの感想
講座に参加いただいた皆さんから、たくさんの嬉しい感想をいただきました。
感想
- 色々な人の意見が聞けて良かった
- このイベントに参加していなければ喋ることができなかった色々な年代の方々と交流することができて新しい発見をすることができて楽しかった。
- 自分のこと取り上げてもらったがとても楽しく参加させてもらいました。ありがとうございました。
- 困りごとの話なのに、ポジティブで明るくワークが進んで楽しかった。
安心安全な場の中で、様々な人の意見を素直に聴くことができたことで、気づきもたくさんもらえたことがよかった。 - 問題をホワイトボードに見える化してるので、客観的に捉える事ができた。
ホワイトボードを見ながら話すので、冷静に話す事ができた.。
答えを求めないことは、ある意味負担がなくて良いと思う。
プロではないものが取り組める気軽なところも良いと思った。 - 子供を対象とした当事者研究をやってほしい
- お母さんの当事者研究をやってみたい
- 対話することの大切さを改めて感じた
- 地域で当事者研究が広がると、生きづらさが少しでも軽減され、人々の交流促進も繋がっていくのかなぁーと思いました。
- もっともっといろんな人たちに知ってもらい、体験して欲しい。
アンケートの結果
ファシリテーター担当メンバーの感想
メンバー1
今回「当事者研究」について知っていただけただけでなく「もっと広めたい」など共感の声をいただけてとても嬉しかったです。
また「こども」や「お母さん」など具体的な当事者さんのための当事者研究のご要望もいただけたので、ぜひそのような機会を作っていきたいと感じました。
メンバー2
様々な世代・背景の方々が協力して、一人の悩みごとに取り組む時間を通して、他者同士が支え合う力の大きさ、心強さを感じることができました。
この取り組みの時間そのものが、自分にとって励ましになりました。
以上、7月3日に行われた当事者研究の講座についてお伝えしました。
講座にご参加いただいた皆様、「まちがく」の関係者の皆様に、心より感謝申し上げます。